2015節分商戦始まる! そこで知っておきたいコンビニが普及させた“恵方巻”の歴史

いつのまにか節分には欠かせない季節商品となった“恵方巻(えほうまき)”。実はコンビニが全国に普及させたものだって知っていましたか? “恵方巻”のルーツは“丸かぶり寿司” 今年も「恵方巻(えほうまき)」の季節がやってきましたね。まだ年も越していないうちから、コンビニではもう年明けの2015年2月3日の節分に向けて予約販売キャンペーンが始まりました。今やすっかり季節の風物詩になった恵方巻ですが、いつのまにか全国に普及したのを不思議に思っている人も多いと思います。そこで恵方巻の歴史についてまとめてみました! そもそも恵方巻とは、2月3日の節分の夜に食べると縁起が良いとされている太巻き(巻き寿司)のことです。途中で切らずに丸ごと1本食べるのは、縁を切らないというご利益にあやかってのこと。「恵方」というのは、古代中国で考えられ、日本に伝えられた分類法で暦や方角などに用いられる十干(じっかん)に基づいて、福徳を司る吉神である歳徳神が位置する縁起の良い方位のことをいいます。恵方巻の風習は、その年ごとに変わる恵方に向かって願いを込めながら、太巻きを丸かじり(丸かぶり)して無言で最後まで食べると、商売繁盛・無病息災・家内円満など願いがかない、福が来るとされている行事なのです。 節分の日といえば「福は内、鬼は外」の豆撒きの行事が有名ですが、これは暦の上で春を迎える立春の前日にあたるため、一年の災いを払うための厄落としとして行われるものなのです。それでこの日を本当の年越しとして、江戸時代後期にはそばを食べる習慣もありましたが、同様に恵方に向かって太巻き(巻き寿司)を食べる風習もあったということなのですね。太巻きには7種類の具材を使うとされているのも、七福神にちなんで縁起を担いだものなのです。 節分に太巻きを食べる風習は、江戸時代末期から明治のはじめかけて大阪の船場で始まったと言われ、関西では「丸かぶり寿司」とも呼ばれています。なぜ、にぎり寿司やちらし寿司ではなく、巻き寿司なのかというと、実は当時、大阪で海苔を販売していた組合が新しい海苔の出回る3~4月を前にして、古い海苔を2月中に売りさばきたいという思惑から海苔巻きを企画したのがはじまりとされています。ウィキペディアによれば、その後も大阪で海苔や酢を扱う組合などが「かぶり寿司」を定着させようと様々なプロモーションを行ってきたと書かれています。しかし、戦後はいったん廃れてしまい、1970年代にやはり販促キャンペーンを展開して、一部の地域で復活したというのが“恵方巻”の前史といえるでしょう。 全国に広まった“恵方巻”の謎 ところが、この“丸かぶり”の風習はあくまで関西だけのものでした。それがなぜ現在のように「恵方巻」として全国に広まったのでしょうか? ここにコンビニが登場するのです。 コンビニでの“丸かぶり”発売は、1983年に大阪府と兵庫県のファミリーマートで販売されたのが先駆けという説があります。しかし、全国に普及させたのはセブン-イレブンで、「恵方巻」という名称も1998年にセブン-イレブンが全国発売にあたり、商品名として採用したことで広まりました。セブン-イレブンの成功を見て、その他コンビニチェーンが追随したのがコンビニの“恵方巻”の歴史なのです。以下の年表を参照してください。 ■コンビニ“恵方巻”の歴史  1983年   ファミリーマートが大阪と兵庫で販売開始(コンビニ販売の先駆け)  1989年   広島県のセブン-イレブンの一部店舗で販売を開始  1995年   関西以西のセブン-イレブンに販売エリアを拡大  1998年   全国のセブン-イレブンに販売拡大(「恵方巻」と命名)  2000年代  コンビニ各社が参入  2007年   日本全体の販売本数が約3000万本に  2008年   2/2・3日の2日間にセブン-イレブンだけで388万本、コンビニ大手3社で約700万本を販売  2010年   一部店舗で年4回の節分(2・5・8・10月)に発売  2011年   ファミリーマートが夏の恵方巻に参入  2012年   夏の恵方巻にセブン-イレブンやサークルKサンクスも参入 こうして見てくると、コンビニ各社の商魂がいかに凄まじいかがわかります。しかし、ここで一点不思議なことがあるのに気付きませんか? 丸かぶり寿司は大阪が発祥のはず。にもかかわらず、セブン-イレブンが販売を開始したのは、1989年の広島県の一部店舗だったのです。近畿圏ならまだしも、なぜ広島なのでしょう? 実はある一人のセブン-イレブン社員が“恵方巻”ブームを仕掛けたのです。それがセブン-イレブン・ジャパン執行役員、野田靜眞(のだ・しずま)さんです(日経トレンディNETの記事を参照)。 当時、野田さんは広島市にある加盟店7~8店舗を担当するOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)でした。加盟店を巡回しながら、商品知識や品揃え、店舗運営に関する経営アドバイスをするのが仕事で、加盟店オーナーと一緒になって売り上げが伸びるよう努力するのが仕事でした。そしてある時、加盟店オーナーと話していて、「大阪には節分に恵方巻を食べる風習がある」と聞いたのだそうです。 広島には恵方巻を食べる風習はなかったものの、当時は地方にコンビニが出来始めて間もないころ。お客さんとのコミュニケーションを大切にして、コンビニというサービスそのものを認知してもらわなければならない時代でした。そこで話題づくりとして「恵方巻」を商品化し、「恵方巻という風習があるんですけど、ご存じですか? 今年の恵方は~」などと声をかけて販売するようにしたのだといいます。これが当たり、売り上げも伸びて、加盟店オーナー達は大変喜んだのだそうです。 やがて野田さんの出世とともに恵方巻の販売対象エリアは広がり、1996年には九州・中国を含む関西以西でキャンペーンを展開。そして、1998年にはついに全国のセブン-イレブンで販売するに至りました。この時、「恵方巻」という名称で売り出したのがきっかけとなり、その後、2000年代に入ってコンビニ各社も参入。「恵方巻」の販売数は年々伸び、全国に定着していったのです。 さらに、節分は2月だけでなく年に4回あることに目を付け、各社が夏にも「恵方巻」を発売するようになります。ほかにもこの「恵方巻」商戦に便乗して、さまざまな商品を開発しては同時に発売するようになりました。節分でそもそも食べられていたそばをはじめ、イメージが似ているからでしょうか、ロールケーキやトルティーヤといった巻き物系のスイーツやスナックも登場。また、鬼はいわしを焼く煙やにおいが苦手といういわれがあり、節分ではいわしを玄関に飾ることで健康や無病を願う風習がありました。これにちなんで、いわしメニューをそろえるところも。こうして節分は一気にバラエティに富んだ行事となりました。そもそも大阪で海苔や酢を扱っていた問屋等が販売戦略として仕掛けた「かぶり寿司」が、現代のコンビニに「恵方巻」として受け継がれる形となったのは何とも面白いですね。 各社出揃った2015恵方巻&節分メニュー そして、2015年2月に向けてコンビニ各社の節分メニューが出揃いました。それぞれ工夫をこらしたラインナップになっています。セブン-イレブンは、恵方巻やそば、ロールケーキのほかに、いわしのメニューの充実しているところが特徴。ファミリーマートは、巻き寿司7種、スイーツ4種、節分そばや弁当など5種を加えた合計16種類をラインナップ。ローソンの恵方巻は使用する海苔をすべて京都府音羽山清水寺で“厄除開運”の祈祷をしてもらっているという念の入れようです。ミニストップはやはり佐野厄除け大師で心願成就の御祈願された海苔を使用。ほかに、「恵方呑み」と称して数馬酒造の「竹葉 能登純米酒」も限定提供。「鬼面付き福豆セット」「なりきり鬼セット」も用意するなど、至れり尽くせり。サークルKサンクスでは恵方巻のほかに、鬼食う(お肉)にかけて「牛カルビ焼肉トルティーヤ」などをラインナップ。そして、スリーエフは全17アイテムを投入。「赤鬼こん棒ロール」「青鬼のこん棒シュー」といった長さ約30cmの“鬼のこん棒”をイメージしたスイーツも登場して、バラエティ豊かな節分メニューが揃いました。 どっちが恵方かわからなくなったら!? さて、恵方巻を買って、いざ食べようと思っても「あれ!? どっちが恵方なのかわからない!」という人のためにとっておきの解決策をお教えしましょう! 恵方のわかるスマホアプリ「恵方コンパス」や「恵方マピオン」があれば、その年によって変わる恵方の方角をコンパスで教えてくれます。ちなみに2015年の2月3日の恵方は西南西(西南西やや西)。もうこれで来年の開運は確実!? いい年を送りましょうね!(コンビニウォッチ!編集部) ●2015年節分メニュー セブン-イレブンファミリーマートローソンミニストップサークルKサンクススリーエフ ●アプリ「恵方コンパス」 iPhone版Android版 ●アプリ「恵方マピオン」 iPhone版Android版 …